反るとなぜ腰が痛むのか

2020/05/10 ブログ
札幌のヨガスタジオミガク

札幌のヨガスタジオミガク小林です。こんばんは。

 

 

Don't think that perfecting an asana makes a good practice. Don't think like that. Many students say, Oh today, I caught my ankles in back bending. Today is my best practice. Don't think like that. Getting up and being on your mat, and just doing what you can, that is sufficient and that is your best practice.

 

ーR.Sharath Jois

 

 

 

ヨガをして体を傷めた経験のある人は結構多いようです。僕はずっと知足とは真逆の態度でアーサナの練習をやり続けていたので(今は以前よりかは落ち着きました)、あちこち痛めた経験があります。いつも言っていますが、僕は傷めることを悪いこととは思っていなくて、そこから改善すればいいや、くらいに捉えています。実際にそこから気づいたり学んだことは数知れず、です。

 

そういう経験と、クラスを通して分かったこと、整体師時代を含めて学んだ知識とで、今日は腰を反らせたときに感じる腰の痛みについて考えます。

かなり理屈っぽく、且つ、長いですから、興味ある人は気合を入れて読み進めてください。

 

 

まず、立っているときの背骨を図で見てみましょう。このように背骨はなだらかにカーブしています。首(頸椎 : けいつい)には前弯、背中(胸椎 : きょうつい)には後弯、腰(腰椎 : ようつい)には前弯があります。

 

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今日は腰の痛みに関する話なので、腰椎を見ましょう。写真にある通り、5つの椎骨(ついこつ)から構成されています。模型は20年前に購入したものなので椎間板がいくつか無くなっています。

 

ここで1つ大事なことを学びましょう。立位では腰から上の胸とか頭・両腕などの重さは、主に腰椎の椎体(ついたい : 1〜5の数字の書かれている部分)とその間にある椎間板(ついかんばん)で支えられているのが理想です。

 

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ですが、下図の左側の人のように、骨盤の前方への傾きが強まったり、骨板を前に突き出して立つクセのある人(背中の丸い人)は、上体の重さが椎体より後ろの椎間関節に多くかかるようになります。

 

 

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すると、関節に対する圧迫が強くなり、炎症が起きたりして痛みが生じるようになります(これがさらに悪化すると、腰椎分離症や滑り症が起こりやすくなると思います)。これは姿勢を矯正したり、骨板周りの筋力のバランスを改善させて、上図の右側の人に近づける必要があります。この姿勢の人の椎間関節には物理的な負荷がかかっているので、マッサージをしても(背筋の緊張が和らぐので、一時的に痛みは軽減しますが)根本的に良くなることはありません。

 

これと似たようなことが、ヨガの反るアーサナで起こりやすくなります。下図を見ると、左側の椎体に前方向の矢印がありますが、これは前屈のときの動きです。右側の図には後ろ方向の矢印があり、これが反るときの動きです。赤い丸印のところを見てください。これが椎間関節ですが、前屈のときは上下の関節が離れていっているのが分かりますか?反対に反るときには、上下の椎間関節が近づいているのが分かると思います(赤丸で見えづらいですが、小さい矢印がありますね)。これが強まると関節の圧縮が起こり、痛みへと繋がるのです。

 

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マットでうつ伏せ状態の骨格模型を反らせます。アーサナでいうとブジャンガーサナに似た状態です。

 

うつ伏せから背筋の力(と腕の力の助けを借りて)で頭〜胸を持ち上げていくと(右側の上向きの矢印)、反対の尾骨(左側の上向きの矢印。僕が指し示している辺り)も微妙に持ち上がってきます。すると、腰の辺りに集まっている赤い矢印のような力が加わり、腰椎椎間関節の圧迫が起こるのです。上の方で解説したのと同じことです。軽い圧迫くらいでは普通は痛みません。この程度で痛む人は、日頃から刺激を受けていて過敏になっていると思われます。

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このことを筋肉の視点で説明します。背中には脊柱起立筋という(いわゆる背筋)大きな筋肉が上下に走っています。この筋肉が働くことでうつ伏せから上体が持ち上がるのです。下図を見てもらえると分かるのですが、この筋肉がどこから始まっているか、なんです。下の方を見ると、骨盤の真ん中の骨である仙骨に付着しているんですね。上の方では、肋骨に付着してます。

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ここで1つ想像して欲しいことがあります。

あなたは今スケボーに乗って、ロープの一端を掴んでいます。そしてあなたと同じくらいの体重の友人も別のスケボーの上に立ち、ロープの反対側を掴んでいます。お互い5m離れているとしましょう。

 

あなたがロープを引っ張って、友人を引き寄せてください。どうでしょう?友人はグングン引き寄せられてきますか?はい、と答えたあなた。想像力がちょっと…足りないかも。自分の足元はスケボーです。自分が安定していなければ、ロープを引いた自分も相手の方に寄っていってしまうはずです。

 

まさにこういうことです。

自分は骨盤側、友人は肋骨側、ロープは背筋と思ってください。

骨盤を安定させる筋力を発揮させなければ(スケボーの上に乗っていたら)、上体は持ち上がりますが(友人は近づいてきますが)、骨盤も引っ張られて、写真の僕が指差している辺りが持ち上がってきます(自分も友人の方に動いてしまいます)。すると、圧迫が起こる。

上の方で骨盤が前に傾いた人の図がありましたね。あれと同じことが起こる、ということです。

簡略化するとメカニズムはこんなところです。

 

 

さて、大事なのはここからです。ついてこれてますか?

これはまさに昨日のブログ内容のことなんですが、背骨には人それぞれ動きやすい部分と、動きづらくなっている部分があるんです。自分の背骨について、それを分かっていますか?クラスの中でブジャンガーサナをしたとしましょう(両手を胸の横に置いて、うつ伏せから反らせるあれです)。ただ単にどこまで上体が持ち上がるか、反らせられるかだけを意識していると、一生分かりません。そんなことじゃなくて、背骨のどこを反らせることができて、どこが抵抗が強く、反らせられないのか。今はどこの背筋が働いて、どこはまだ働いていないのか。そこをしっかり感じられるようにならないと、痛みのある人は何も解決しないでしょう。

 

背骨のどこにも反ることに抵抗のない、柔らかい背骨があったとします。そして意識的に動けるとします。ゆーっくり頭の方から少しずつ反らせ、上体を持ち上げていこうとすると、背筋は上の方から順番に働き始め、背骨は上から順番に外らせていけるでしょう。ある一定のところまで持ち上げると、腰のあたりの背筋も収縮し、反る刺激が腰椎に加わっているのを感じられると思います。骨盤を固定させる力を使わなければ、さっきのロープの引っ張りのように尾骨も少し持ち上がってきます。

 

では、背骨に反らせられない部分があった場合はどうでしょう。同じように上から順番に持ち上げていこうとしても、反らせられない部分は一つの塊のように動き、大して持ち上げていないのに、いつの間にか腰椎に刺激が到達し、その背筋もギュッと働くことになります。ここで、「腰椎に刺激が到達している。背筋も収縮している。これで充分」と判断できればいいですが、どれだけ持ち上がるか(動きの質ではなく量)ばかりを意識していると、さらに強い刺激が腰椎に加わり、背筋も無理をし、痛みを誘発します。動かない部分を補うように動かされた腰椎、背筋に過剰な負担を強いるわけです。椎間関節の圧迫が強くなっていることでしょう。

 

それを避けるには、昨日書いたことです。動かない部分を見つけ、動かそうと意識を集中させる。背骨のどこが刺激されているか、どのあたりの背筋が働いているか、これに集中する。どれだけ反らせられたかという結果(量)のみを求めているうちは、このことは感じられないし、何かが改善することは少ないと思います。

 

そんなこと可能なのか?と疑問に感じる方のために、イメージを持ってもらいやすいよう、もう一つの背筋の図を紹介します。背筋とは上でお見せした長〜いものだけではありません。長い背筋は主に大きな動きを起こします。上体を持ち上げる、反らせるなどです。それに対して、動きも誘導するんだけど、主に背骨を安定させるのに使われる小さな筋肉たちも存在しているのです。それが下図の筋群です。多裂筋とか回旋筋と呼ばれるものです。これらは、1つの椎骨とその1つ上、2つ上の椎骨を繋いでいます。ご覧の通り、下から上までびっちりついてますよね。イメージとしては、これら1つ1つを上から下まで順番に働かせていくような感じです。

動きの悪いところが見つかったら、そこを働かせるんだー、とトライしてみてください(ここでは基本的なブジャンガーサナを例に解説しています)。

 

札幌のヨガスタジオミガク

腰の背筋の収縮が強すぎる(痛みを感じるほどに)、または椎間関節が圧縮されるような痛みを感じたら、そこの背筋の収縮は少し緩め、椎間関節の圧縮による痛みの少なくなるところまで、腰椎の反り具合を調整します。そして、反る動きの悪いところにこそ、ちゃんと刺激が伝わるように微調整をしましょう。1つの例としては、骨盤の傾きを調整することです。上の図(横向きの反りの強い人と、反りを少なくしている人の図)にあるように骨盤が前傾(左図)し過ぎていたら、それを痛みが減ずるまで戻します。どこまで戻せばいいかは、人それぞれです。それは教わるものではなくて、自分で見つけるものです。

この作業はすべての反るアーサナに共通することだと思います。

 

体を反らせるときに、骨盤が前傾するのは悪いことなんだ、と思われるかもしれませんが、そういうわけではありません。

ヨガのクラスで誰でもやったことがあるであろうcat & cow(四つん這いで、反らせたり丸めたりするアレ。だけど、アレをcowと呼ぶ意味が分からん。あんな牛見たことないわ)で、身体を反らせたとき骨盤は前傾しています。これが自然な動きだからです。なので、反らせるアーサナのときに、自然な動きを抑え込みすぎるのは、僕は違うと思っています。ある程度は自然に任せていいんだけど、自分の腰にとって無理のない刺激に収まるように調整する、というのが大事なのではないかと。

 

より深い後屈のアーサナ(深いウルドヴァ・ダヌラーサナとか、ドロップバック、カポターサナなど)では、さらに意識する範囲を広げ、より繊細に感じ、コントロールすることが必要になります。具体的には仙腸関節とか股関節など。それは複雑すぎる上に、長くなりすぎるので今日はやめておきます。

 

分かる人には分かっちゃうでしょうから、一応補足しておきます。また上の図の話です。横向きの人が2人並んでいる図を見てください。右側の人は骨盤を後傾させようとしています。よく見ると(図を反転させています)、お腹に『R』、お尻に『GM』と書かれています。Rは腹直筋で、GMは大臀筋です。

骨盤を後傾させるためには腹直筋と大臀筋を使えばいいんだな!と思われるかもしれません。確かにそれでできるんですが、体を反らせたいときに腹直筋をあまり働かせると、反りを邪魔します。お腹は長〜〜〜く伸ばすようにしないと。腹直筋よりお腹の内圧が逃げていかないように腹横筋を働かせた方がいいと思います。大臀筋を強く収縮させてしまうと、股関節が外旋します。それも深く反るときにはよくありません。大臀筋が働いたとしても、股関節の外旋方向の動きを中和させるような内旋方向の力が必要になります。

…そろそろ訳がわからないですよね。真面目に理解しようとする気が失せますよね。失礼しました。文字や文章で解説しようとすると、どうしても難解になってしまいます。

 

 

言いたいことは、量ではなくて質ですよ、ということ。質を上げるには、動きに対して意識的になる(マインドフルである)こと。痛みはないに越したことはないけど、そこから逃げていても、何も変わらない。怖がらずに自分なりの適切な動きを模索すること。

 

 

最初に書いたのは、現在のアシュタンガヨガを先頭に立って指導しているシャラート先生が言っていた(らしい)言葉です。

 

 

『アーサナを完璧にすることが良い練習だと思わないで。生徒の中には「今日はバックバンドで足首を掴めた※。最高のプラクティスになったよ!」という人が多くいます。そんな風に考えないで。朝起きてマットに立ち、ただあなたのできることをする。それで十分だし、それがあなたの最高のプラクティスですよ。』

 

※ ドロップバックから両手で足首を掴むこと