希釈とバリエーションと原液
子供の頃、送られてきたお歳暮の包みを開ける瞬間が好きでした。中身が洗剤やサラダ油だったときのガッカリ感と腹立たしさといったら。
「もっと子どもの気持ちを考えろやー」
って、いやいや。誰もあなたに贈ってない。
そんな時、たまにカルピスを贈ってくれる神がいるんですよ。あれは嬉しかったなぁ。今では見なくなった大瓶です(確かそうだったような記憶が…)。
子どもの頃は原液をコップに入れて、水で薄める前に一度あの原液の濃さを味わっていました。濃すぎて飲めるものではないですけど、ちょっと味わう程度にはめちゃうまい。
いつからか、稀に贈られてくるカルピスの原液に、バリエーションが生まれました。葡萄とかパインとか。僕はバリエーションの味がまったく好きではありません。ノーマルしか飲みませんでした。
大人になると、ペットボトルで最初から薄められたカルピスや、炭酸のカルピスソーダなるものまで気軽に飲めるようになりました。が、僕の好みの希釈ではないので、ほとんど飲むことはありませんでした。「カルピス THE RICH」だけは別格でしたけどね。うむ、あれは美味い。
そんなカルピスの飲み方でぼくが1番好きなのは、牛乳で割るやり方。あれより美味い飲みものを僕は知らない(世間知らずも甚だしい)。
と、実にどうでもいい僕のカルピス談義をよくぞここまで我慢して読みましたね。
グルジ(Sri.K.パタビジョイス氏)をカルピスの原液としましょうよ。現代のアシュタンガヨガってどれほどまでに薄められたんでしょうね。読むと気を悪くされる方もいらっしゃるかもしれませんが、シャラート氏に代替わりした時点でかなり薄まったのではないかと思います。会社とかでもそうでしょうが、カリスマ的な人の後を継ぐ人ってどうしたって。ねぇ。スティーブ・ジョブズの名前は誰だって知ってるけど、今の社長は?と聞かれて答えられる人は一般人では多くないでしょう。売上はどんどん伸びていっているかもしれないけれど、Macのパソコンが世に出たときや、iPhoneが登場したときほどの革新的な何かは生まれてないでしょう。
インド・マイソールのアシュタンガヨガの総本山にしても同じで。10人くらいしか入らないシャラで、グルジとの濃密な時間を過ごした人と、70〜80人(100人くらいかな?)入る体育館みたいなところで練習している人とでは、希釈性が全然違うと思う。
いまは色んなヨガを気軽に学べるようになったので、その色んな要素をアシュタンガヨガに取り入れる人もいる。葡萄やパイン味のカルピスみたいに。
批判しているのではありません。カルピスのいろんなバージョンの味や、ソーダ、牛乳割り、その他の様々なカルピスの飲み方を楽しむ人がいるように、アシュタンガヨガもそれでいいのではないかと思うようになりました。何味のアシュタンガヨガであれ、その人がそれを楽しめたり、それをすることで何かが良い方向に進むなら、それでいいじゃないかと。アシュタンガヨガというフォーマットがあって、その中で自分が好きな味を選べばいいじゃない。
だけど、たまに「それはもはやカルピスじゃないよね?」というものもある。つまり味だけを真似たものはカルピスじゃない。乳酸菌というカルピスの要となるものが入っていないと。カルピスじゃない別物として楽しむ分にはいいけど、それをカルピスとして飲まされていたとしたら、その人は可哀想だと思う。そこに乳酸菌は入っていないよ、と教えてあげたい。もしかしたら、提供している側の人も、それがもはやカルピスでないことを知らないのかもしれない。
今はもうアシュタンガヨガの原液を味わえる機会はありません(僕は味わったことありません)。本から学ぶか、原液を味わった人から教わるしかない。僕は何味のカルピスだろうと、肝心要のところが抜け落ちていなければ、それでいいと思うようになりました。が、自分ではやっぱり原液に近いものを味わっておきたい。それを知った上で、バリエーションを味わい、楽しみ、それを好む人たちが集まれる場を維持したい。
26日(日)の特別講座では、僕が教わり学んだ原液に近いものから、人に合わせた、用途に合わせたバリエーションをお伝えする予定です。ご自分の好みの味を見つけてください。
これだけカルピスの話をしておきながら、もう何年もカルピスは飲んでいないのでした。久しぶりに牛乳で割ったものをガブ飲みしたいなぁ。