ジャヌ・シルシャアサナについての考察
昨日、いつもの草むしりをしました。そこで、驚愕の生き物を見てしまったのです。人生史上最速のミミズ。
あなた蛇ですか?ってくらいに速いの。ミミズは慣れたつもりでしたが、さすがに「うわーっ!」って声を上げました。
このブログで何度か登場している『ヨガ・マーラ』は、アシュタンガヨガを世界に伝えたSri.K.パッタビジョイス氏の著書です。その中の、ジャヌ・シルシャアサナA・B・C(翻訳本に記載の通り)のやり方が書かれているところを抜粋します。注意深く読んでください。読みながらやってみると尚良いです。
※ レチャカ:呼気のこと プーラカ:吸気のこと
A
パスチマッタナアサナ同様に座り、左脚を伸ばし肛門と性器の間を右のかかとで押し、右膝が90度の角度になるよう引き寄せ、腰椎部分から前屈し、脚を伸ばした方の足を両手でホールドし、肛門と下腹部を引き締め、背中をまっすくにし、頭をしっかりと持ち上げてプーラカを行います。次にゆっくりレチャカを行いながら、伸ばした脚の方の膝に額があごをつけ、レチャカとプーラカをなるべる深く行います。
B
パスチマッタナアサナ同様に座り、左脚をまっすぐ伸ばし、右の膝を85度の角度に向け、右のかかとの上に直接肛門が乗るように座り、両手で左足をホールドし、肛門と下腹部を引き締め、背中をまっすぐにし、頭をしっかりと持ち上げてプーラカを行います。次にゆっくりレチャカを行いながら、伸ばした方の脚の膝に額かあごをつけ、プーラカとレチャカを十分になるべく深く行います。
C
再びパスチマッタナアサナ同様に座り、左脚をまっすぐ伸ばし、右足を鼠径部の方向に引き寄せ、つま先が床を押しかかとがへその方向を向くようにねじり、右膝を45度の角度に向かって押すようにし、両手で左足をホールドし、背中と両腕をまっすぐにし、肛門と下腹部を引き締め、プーラカを行います。次にレチャカを行いながら腰椎部分から前屈し、伸ばした方の脚に額かあごをつけ、右のかかとをへそに押しつけ、プーラカとレチャカをなるべく深く行います。
以降はヴィンヤサの記述が続きます。アーサナの効果について、他のアーサナではさらっと書かれているものが多いのに対して、このジャヌ・シルシャアサナに関しては、すごく長く書かれています。
だけど、です。今日の本題はここからです。
上記のようにいつもやります?正確に上記の通りにやっている人はあまりいないと思うんです。現代のヨガはおそらくアイアンガーヨガの影響だったり、解剖学の影響で、前屈はほぼすべて股関節で行われますよね。違和感がちゃんとありましたか?上記のジャヌ・シルシャアサナでは、『腰椎部分から前屈し』と書かれています。股関節とは書かれていません。それは表現の仕方が違うだけじゃない?と思いますか?いいえ、それは違います。
骨盤や股関節の構造がちゃんと分かっていれば、ヨガ・マーラに書かれているように前屈をすれば、必ず腰椎からしか前屈できないのが分かります。
Aであれば、「肛門と性器の間を右のかかとで押し」と書かれています。もしこれを股関節から前屈すれば、骨盤を前傾させるということになるので、会陰部はやや後方に向き、かかとから離れていくことが分かるでしょう。
Bなら、「右のかかとの上に直接肛門が乗るように座り」です。ハムストリングがかたければ、そもそも股関節から前屈はできませんけど、もしハムストリングに柔軟性があり(柔らかければ柔らかいほど)、股関節から前屈したとしたら、骨盤底の向きは後方になり、肛門はかかとから離れていくはずです。
Cはこうです。「右のかかとをへそに押しつけ」股関節から前屈すれば、多くの人はへそではなく下腹部がかかとに当たりませんか?かかとにへそを押しつけるためには、骨盤は前傾させず腰椎から曲げなければならないと思います(これに関しては、下腹部の長さが人それぞれなので、一概には言えませんが)。
現代のヨガが股関節から前屈する理由はなんとなく分かります。腰椎での前屈は、椎間板に負担をかけるし、腰椎の後方の組織に強い負荷をかけますから。それだと普段から腰を丸めて座る時間の長い人にとっては、その腰を悪化させることにも繋がります。こういうデメリットの方が大きく感じるから、古いやり方で行なう人は減ったのではないかと思います。
古いやり方と、現代のやり方のどちらが正しいかを問いたいわけではありませんし、こちらのやり方でやりなさいというつもりもありません。
ただ、僕が思うのは、この本に1ページ以上を割いて書かれているような効果は、現代のやり方では得られないだろうということです。だってアーサナの形が全然違うし、それが違うということは、刺激される場所も使われる場所も全然違うということだから。
もちろん、現代でのやり方で得られる何かは、古いやり方では得られないでしょう。例えばハムストリングの伸びとか。ハムストリングの柔軟性とか。ハムストリングの柔らかさとか。書くことないから同じことを3回書いた。あと、曲げている方の股関節の柔らかさもですかね。他にも何かあるのかな。
あ、そうだ。ハムストリングのかたさが腰を丸めてしまい、それで腰痛になる人にはいいかも、ですね。
反対に古い時代のやり方だと、腰の筋肉の過緊張が腰痛を引き起こしている人にとっては、腰椎からの前屈は良いでしょう。だけど、過緊張があったら腰椎から前屈すること自体が難しいかも。
こういうことを知るか知らないかは、自分が知ろうとするかしないか、知りたいかどうか、だと思います。知ったうえで何を選ぶかは自分で考えて決めればいいと思います。